東北支部運営委員会等からの意見(2021.5.4)に答えて
2021年7月3日
日本環境教育学会 会長(代表理事) 朝岡幸彦
本学会が「環境教育に関する研究及び実践の推進を目的とする」(定款第3条)組織である以上、会員にとどまらず論理的・批判的な意見の自由を保障しなければならないことは明らかです。こうした立場から、日本学術会議会員の任命拒否問題に対しても、会長声明『学術会議会員の任命拒否に断固抗議します』(2020.10.5)を公表し、政府等による学術研究への介入を強く批判してきました。
他方で、環境教育の実践・研究に関わる実践家・研究者の集団として、専門家の立場から社会のあり方や科学・技術のあり方について積極的に発言する社会的な責任があると考えます。ご指摘のありました次期理事に「(1) SDGsの主旨を尊重して、その実現に寄与できること」を求めることは、批判の有無にかかわらず学会として引き続きご議論いただくべきことであり、これを機会に多様な意見が出され、研究や教育実践として進められることが望ましいと考えております。とはいえ、日本学術会議が『SDGsとのかかわり−第23期及び第24期に発出した提言・報告を中心に−』で、「SDGsの観点からは、日本の社会において何がいま取り組むべき課題なのか、日本の学術は世界に対してどのような貢献をなしうるのか」を検証しているように、学術団体として学会運営の方向性に「SDGsの主旨を尊重」することを位置付けることは重要なことと思われます。
このたびの『次期(2021、2022年度)理事の選出に関する申入れ』(2021.3.20)は、学会運営の基本的な方向性について現理事会から次期理事会に引き継いでいただきたい姿勢を示したものであり、会員個人の研究・実践活動を規制するものではないことを確認させていただきます。
また、会員から一通のご意見がありましたが、多くの論点を含むため次の代議員選挙に向けて参考とさせていただきます。
本来であれば速やかに理事会としてご回答すべきものではありますが、「申入れ」が代議員の選出投票に影響を与えるとのご指摘をいただいたため、投票終了後となりましたことをお詫び申し上げます。また、すでに新たな役員体制が組織され、改選によって私を含むほとんどの理事が退任するため、理事会の議決ではなく会長の見解という形で回答させていただきます。
東北支部運営委員会からの意見(2021.5.4)
日本環境教育学会理事会 御中
ニュースレター等に掲載された理事会による議事の内容について(意見)
コロナ禍の中、理事の皆様が学会運営にご尽力いただいていることに感謝申し上げます。
さて、4月に入り学会事務局から第3期代議員選挙の実施に関するする封書が会員に届けられました。この代議員選出に関わって、「環境教育ニュースレター」第130号(2021.3.31)に、理事会(2019, 2020年度)による「多様性を尊重した学会運営のために」と題した記事が掲載され、同じ内容がメールニュース第23号(2021.5.1)でも伝えられました。その内容は、次期(2021, 2022年度)理事の選出に当たり、全会員に向けて以下の3つの条件を考慮することを申し入れる内容でした。
(1) SDGs の主旨を尊重して、その実現に寄与できること。
(2) ジェンダーバランス等を意識して理事を任命すること。
(3) 若手の理事を意識的に任命することで世代交代がなされるように配慮すること。
現理事会は選挙によって選出された会員で構成され、その責任において理事会の意思を会員に伝えるのは必要なことと考えます。しかし、 (1) の「SDGs の主旨を尊重し」という価値観による縛りを求める表現には違和感を覚えました。
「SDGs の主旨を尊重」は、日本社会で一般的に求められる組織の努力目標としての (2) ジェンダーバランス および (3) 若手の登用とは明らかに異質な事柄です。学会の中でもSDGs の課題、限界、賛否等の議論が存在する中で、この表現は捉えようによっては「SDGs に批判的な会員は理事から排除すべき」とも受け取れるものです。これは記事のタイトルである「多様性を尊重した学会運営」に照らしても明らかに逆行するもので、このような表現で会員に向けて申し入れを行うことによる代議員選挙への影響が懸念されます。
私たちは、SDGs が持続可能な社会の実現に果たす積極的な役割があることを十分に意識していますし、理事会もSDGs への批判を抑制するような意図があるとは考えていませんが、やはり誤解を避けるため、このような表現は今後より慎重にしていただく必要があると考え、東北支部運営委員会として意見を述べさせていただくことにした次第です。
2021年5月4日
日本環境教育学会東北支部運営委員会