一般社団法人日本環境教育学会 設立趣意書
2016年9月
日本環境教育学会は、公害教育と自然保護教育をはじめとする過去の実績の上に新たな研究と実践を積み上げ、その普及をはかる中核として、また、研究や実践を発表して評価を受ける場として1990年に設立された。以来四半世紀以上にわたり、新たな時代の担い手を育成する環境教育学の構築にむけて、多くの実践的研究を積み重ねてきた。この間に世界では1992年のリオ・サミット、2002年のヨハネスブルグ・サミット等の環境教育に関わる重要な会議が何度も開かれ、ESD(Education for Sustainable Development)という概念が重視されるようになった。一方、日本においても、1991年の『環境教育指導資料』の刊行や環境教育推進法の制定など、環境教育の制度的な充実が進展しつつある。
日本環境教育学会も着実な活動を展開し、環境教育の普及発展に貢献してきた。毎年学術大会を開催し、学会誌『環境教育』もこれまでに60余巻を発行してきた。また、『環境教育辞典』などの単行本を刊行している。そのほかにも海外の環境教育学会と交流協定を締結し国際交流を活発化させるとともに、支部研究大会や支部懇談会など、各地域において学術研究の裾野を広げる取り組みを行ってきた。
しかし今日、環境教育をめぐっては、例えば次のような喫緊の課題がある。①次期学習指導要領への文部科学大臣諮問にみられる学校教育の変動にどのように対応すべきか。②「国連ESDの10年」終了後の新たな行動目標へどのように協力できるか。③防災教育へどのような貢献が可能か。④東日本大震災に端を発する福島第一原発事故から何を学ぶか。また、中長期的には、⑤学校教育と、学校外教育の垣根を取り払う動きが加速化している中で、日本環境教育学会がそのけん引役を果たすこと、⑥今後少子高齢化が急速にすすむ中、地域発の環境教育の活性化に学会として力を発揮することなども期待されている。
環境教育の研究・実践のより一層の普及・発展させるとともに、これらの諸課題に的確な対応をしてこそ、日本環境教育学会の存在意義がある。そのためには、①研修会開催事業、②教材の開発・刊行事業、などの社会的要望に応えるとともに、学会の活動の透明性を高め、その公正さを示す責任を果たすために、日本環境教育学会を一般社団法人として再出発させることに踏み切ることとした。