学会の変革から社会の変革へ

 

中村和彦(東京大学)

 

 国連にてSDGsを含む2030アジェンダが採択されてから、すでに5年あまりが経ちました。Transforming Our World――世界の変革に向けて、私たちの社会は少しでも見通しを持てているでしょうか。昨今のCOVID-19感染拡大により、否が応でも行動様式の変革を余儀なくされる状況となりましたが、持続可能な社会づくりの行末は依然として不透明な部分も少なくありません。

 

 そのような中、このたび私は1984年生まれという若輩の身で、日本環境教育学会の会長に就任いたしました。従来の学会長像とは著しく異なることを、私自身よく承知しております。しかしそれ以上に、学会員を代表する代議員の皆様が私を会長に選んでくださった、それが意味するものを重く受け止めるべきと思っています。社会の変革を見据え、この日本環境教育学会を本気で変革していくのだという強い意思を、メッセージとして込めていただいたと、私個人としては受け取っているところです。

 

 実際、まだまだ経験の浅い私は、社会を大きく変革させるような力を未だ持ち合わせていません。ただ、当学会に限ってならば、これまで4年ほど事務局長や編集委員長といった主要会務に携わってきた経験を活かして、幾ばくかの変革を生むことができるかもしれません。ここでは、その具体的なビジョンを3つほど挙げておきたいと思います。

 

 まず、学会内のあらゆる部分において、旧来の価値観にとらわれない多様な属性の会員による活動を奨励することです。年齢・ジェンダー・地域・所属など様々な立場の違いを超えて各会員の能力が最大限発揮される学会を目指して、今期から特設の「ダイバーシティ推進委員会」を立ち上げました。これは、2030アジェンダの「誰一人取り残さない」多様性と包摂性を強く意識した動きでもあります。

 

 次に、多様な会員の皆様に活躍いただくためには、多様な会員が在籍する学会であり続ける必要があり、現在の約1,000人という会員規模を維持することが当面の現実的な目標となります。とりわけ、本学会の設立当初からの特徴として、研究者だけでなく実践者の方々にも数多く在会いただいています。特に実践者の方々による研究活動を支援するための各種セミナーを開催するなど、学会として会員サービスの向上に改めて取り組みます。

 

 そしてもちろん、社会の変革に向けた動きも、少しずつ具体化していく必要があります。とりわけ、温暖化や度重なる異常気象と災害、もはや気候危機と称することに必然性を感じる昨今においては、関連学会として気候変動教育を推進するための研究活動や政策提言が求められます。当学会の変革が社会変革の一助となるべく、会員の皆様に日本そして世界の各地で活躍いただけるよう、会長として尽力したいと思います。当会活動への積極的なご参画を、何卒よろしくお願い申し上げます。

 

環境教育ニュースレター132号(2021.12.20, p.1)より抜粋